金沢工業大学の伊藤健治教授・阪井尚貴研究員らの研究グループはマイクロ波（周波数5.8GHz）の無線電力伝送(出力1W)において世界最高の電力変換効率92.8パーセントを達成しました。
無線電力伝送とは、波長の短いマイクロ波などの電波を使って、離れたところにワイヤレスで電力を送る技術です。
電源と機器をケーブルでつなぐ必要がないのでいろいろな場所に電気を送ることができます。電力変換効率は入力した電力に対してどの程度の割合で出力できるかを表し従来の無線電力伝送は７０パーセントが限界でした。
無線電力伝送の技術はドローンや無人飛行船、無人走行ロボットへの送電に役立つとされ、世界中で開発競争が繰り広げられています。
例えばドローンでは地上から電気を送り続けることで長時間の飛行が可能になり、災害現場での捜索活動で力を発揮できる期待をされています。
将来、宇宙の静止軌道上に浮かべた太陽光発電衛星から無線電力伝送によって地上に電気を送ることも考えられます。
これまでの技術では、交流のマイクロ波を受けて直流電力を出力する「受電レクテナ」（受電アンテナと整流回路を組み合わせた装置）に複雑な整流回路が必要でした。整流回路は昇圧機能などをもった回路と整流用のダイオードをつなげたものなのでその部分の電力の損失が起き変換効率が下がってしまいます。そこで研究グループは受電アンテナ自体に昇圧などの機能を持たせたシンプルな回路を考案しました。さらに整流用ダイオードには高性能なガリウムひ素ダイオードを採用し高い変換効率を実現できました。
研究グループは次の目標として10wの大電力高効率受電技術の確立に向けた取り組みを進めています。この技術が進展していけば身の回りの電子機器をワイヤレス充電できるようになったり宇宙の発電所から地上に電気を届けたりできるような日もやってくるかと思います。
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